top of page
検索
執筆者の写真計画 若宮

シンデレラじゃない

今日、スカートを買いながら、最近靴を買わなくなったな、と思いました。

現状私が所持している「歩きやすい靴」というのは厚底の、黒い、ナイキのスニーカー1足だけで、まだまだ現役ではありますが、少し色褪せてきていました。

昔よく履いていたローファーやヒール等は、よく足を痛めるので、去年の頭ごろから履かなくなってしまいました。

なのでここ1年近く、私は外出時の8~9割をこのナイキのスニーカー1足で済ませています。

私は、自分に対して、もう1足ぐらい歩きやすいスニーカーを持っててもいいんじゃないかと思いました。

別に「靴は履き潰さないと新しいものを買ってはいけない」というルールがあるわけではありません。

着ている服に合わせて履き替えれるように、2足持っておくのも悪くない選択です、が、私は結局買うことをしませんでした。

それは私にとって「スニーカーを買う」という行為が少し特別なものだからかもしれません。

私がローファーやヒールをよく履いていた頃、クリスマス近くに当時の恋人が「スニーカーをプレゼントしようか?」と言ってくれました。靴擦れを起こして痛いと泣くことが増えたからだったと記憶しています。

恋人と並んで歩く時、少しでも大人っぽく振る舞いたくてそのような靴を買っていたのですが、正直痛みが限界を迎えていたので、ありがたい提案でした。

あれじゃない、これじゃないとZOZOTOWNを一緒に見たり、靴屋を巡ったりするのはとても楽しい時間でした、が、恋人とは靴を買う前に別れてしまいました。

私はショックのあまり「せめて靴買ってから別れろよ笑」と言う元気もなく、そして立ち直る間もなく、演劇の関係で東京にしばらく滞在することになりました。

東京には、飾りのスパンコールが取れまくったスリッポンを履いていきました。それがその時私が所持していた中で1番歩きやすい靴でした。

実は少しサイズが合っていなく、土踏まずがつりやすい靴だったのですが、新しい靴を新調する心の余裕はありませんでした。

滞在時はプリングルスのサワークリームオニオン味が夜の主食で、昼はその食べ終えたプリングルスの容器にゆで卵をいくつか入れて持ち歩いたりしていました。

今考えると、かなりの鬱状態でした。

そして稽古場に電車で向かっていた時のことです。

乗り換えをしようと、電車のドアを跨いだ瞬間、後ろの人に軽く踵を踏まれた拍子にスポリとスリッポンが脱げた感覚がしました。

あ、と思い振り返りますが靴はどこにも見当たりません。

目の前に、私の踵を踏んでしまったであろうお姉さんが、あ、という顔をしていました。

お姉さんは電車とホームの隙間を見つめました。

私も電車とホームの隙間を見つめます。

隙間は、結構広く空いていました。スリッポンぐらいなら余裕で通り抜けそうなぐらい。

お姉さんが「すみません!すみません!」と私に向かって言いました。

私は即座に「大丈夫です!」と返しました。

返しながら、ぼんやり、いいかげん新しい靴を買おう、と思いました。

しかしお姉さんはそれでも謝り続けました。

私はもう1度、「大丈夫です。ほんと、大丈夫なんで気にしないでください」と言いましたが、お姉さんは「すみません!すみません!」とうわ言のように繰り返しながらホームの方へと戻り、その瞬間、電車は扉を閉め、発車しました。

多分、私も一緒に降りて靴を拾うべきだったのでしょうが、そこまで脳みそは回りませんでした。

私は、片足靴がないまま、呆然と稽古場に向かいました。

その後、稽古場で「シンデレラみたいですね」と言われましたが、王子様が靴を持って探しにきてくれるわけはないので、稽古場近くのABCマートに靴を買い行きました。

すると、恋人とZOZOTOWNのサイトを見ながら「これいいね」と言い合った靴がありました。

私はそれを自分で買いました。

感じの良い店員のお兄さんが「ぴったりですね」と言ってくれました。

それが今履いている厚底の、黒い、ナイキのスニーカーです。

この靴は、靴擦れもしませんし、土踏まずがつったりもしません。

お気に入りの靴です。

もし、もう1足目を買ったとしても、今のスニーカーばかり履いてしまうような予感がしています。



電車の車内で片方靴がない様子。



ちなみに東京では帽子も無くしましたが、親切な人が置いていてくれました。




閲覧数:94回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comments


bottom of page