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執筆者の写真計画 若宮

「学生というぬけがら」

※今回はメンバーの五島さんが、学生時代のことを書いてくださいました(若宮)





 10代の時はとにかく「学生」という肩書きを捨てたくてたまらなかった。別に学生であることが嫌だったわけではないが、学校という狭いコミュニティの中で、特段自分が選択したわけでもない環境の中で毎日を送るのが苦しかった。昨年三十路を迎え、早くも10代の時の記憶がかすみ始めているが、何が嫌だったのか少し思い出してみたい。



 小学生の時は、その名称に「学生」という言葉が入ってるにせよ、自分が学生であると意識を持って生きてる人はいないだろう。僕もそうだった。小学生のうちは学生云々言われることはない。大人や社会から余裕で子ども扱いしてもらえる。当たり前だけど。電車賃やバイキングは子ども料金だし、お年玉だって年金のように問題なくもらっていた。幾つかの葛藤は抱えつつも、基本的には特に何も考えずのびのび生きていた。

 中学生になると途端に自分を取り巻く世界が激変する。

 6年間着たい服を好きに選べた時代から打って変わり、成長を見越した大きめの学ランを着せられた。黒髪のみ、襟足の短さや耳にかかってはいけない頭髪ルール。6年生の時は髪を伸ばし長髪にしていたが、中学校入学式前日に断髪した。個々の特徴を潰しにかかってくる仕様の数々は結構ショックだった。おかげで学校機関や社会に対する反骨精神がめきめきと芽生えることにになる。

 あと急に発動する「先輩後輩ルール」。これは本当に意味が分からなかった。急に年上に対して敬語を使うことを強要される。だったらなぜ小学生のうちに教えてくれない?小学生の時は同級生の兄や姉に敬語なんて使ったことないし、もはや担任の先生にすら平気でタメ口だった。それを咎める人間も誰もいなかった。社長的なイメージがあったのか、唯一校長先生にだけは敬語を使っていた(なんでや)。

 先述した反骨精神が芽生えたこともあり、できる限り「先輩を敬いすぎない」ポリシーを貫いていた。中学では部活には入らず、いわゆる帰宅部だったので先輩後輩の交流からはある程度免れていたが、それでも先輩と全く交流せず生活するのは不可能に近いので、例えば「先輩」という言葉は使わず「さん」づけで名前を呼んでも許されるかまずはかり、それが許される場合は大体敬語を使わなくてもOKな場合が多いので、そうやって敬語を使う必要があるか否かをテニプリ乾貞治のデータテニスばりに常に判断していた。おかげで中学の上下関係はなんとか切り抜けた気がする。

 同級生となると今度はスクールカーストなるものが襲いかかってくる。当時は衰退し始めてはいたものの、まだヤンキーや腰パン文化が根強く残っていた時代。身なりや素行の悪い奴だったり、女子ならスカートの丈が短いだとか眉毛をいじってるだの何なの、そういう生徒が大体トップに君臨していた。その次のランクにマイルドヤンキーやマイルドギャル(ただ彼ら彼女らはゴリゴリの子達の傘下なのであまり権力は持っていない)、運動神経が高い子やテストの点数が学年上位の子が肩を並べる。その次はまた様々に細分化され、アメトーークで放映されたようなイケてないグループに属した奴もいれば、独自の路線をいく不思議系、学問やスポーツではない何かに秀でた才能を持つことによりある程度上位をキープできる者、ゲームやアニオタ(これも当時は今ほど市民権を得ていなかった)などが挙げられる。

 通っていた中学校は3つの小学校によって形成されていたが、2クラスで平和だった僕の小学校とは裏腹に5クラスくらいある柄の悪い小学校と混ざったことにより、小学校の時はイケイケでランク上位だった子が一気にランクダウンしたのを見て切なくなった記憶がある。あと物静かでかわいかった女子が中学デビューして一気にヤンキーになったのもはたから見ていて悲しくなった。

 僕はというと、そもそも学校そのものに馴染めている自覚がなかったため特定の所属はなく、むしろ逆にランク関係なく様々なグループに片足を突っ込むことにより身分制度に囚われない生活を送っていた。それと1年から2年にかけてぐんと身長が10センチ以上伸びたことも手伝っていると思う。前から数えた方が早かった背の順がいつの間にか後ろからの方が早くなっていた。残酷だが身長の高さは結構スクールカーストに影響を与える。

 


 そんな感じでなんとか中学をサバイブするわけだが、当時送っていた日々を書き始めたらキリがないので、中学の話はこれくらいにしておく。

 高校は「制服と校則がない」という理由だけで福岡市内で唯一あった単位制の学校を選び受験した。倍率は割と高く、主要5教科の成績はそんなに良い方ではなかったが何とか無事に合格。気づけばアイアンマンのスーツのようにピッタリフィットしていた学ランから遂に解放されたのだった。


(つづく)




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